がんに関するQ&A

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がん薬物療法(抗がん剤治療)について

Q1. がん薬物療法(抗がん剤治療)って何ですか?
A1.

がんの治療は、外科治療・放射線科治療・内科的治療(薬物療法や緩和治療)それぞれ単独では十分な治療成績は期待できません。治療を受けられる方ごとに最適な治療を選択し必要に応じて組み合わせて行くことにより、初めて質の高い生活に結びつく治療を受けて頂くことができると考えております。幸い東北大学病院には、がんの治療に関して専門性の高い診療科がすべて揃っており院内連携は非常に円滑です。他の診療科と連携して治癒を目指し、治療を受けられる方がより質の高い生活に結びつくような治療を目標として日夜診療を行っております。がん薬物療法は、がん治療3本柱の一つであり、進行がんに対し適応される場面が多いですが、 手術の成功をより確実にするための術前化学療法や手術後の再発を防ぐ術後化学療法など、がん治療の様々な場面で行われております。がん人口が増加するなか、より高い治療効果を得るために抗がん剤を複数組み合わせた併用療法が主流であり、分子標的治療薬などのさらに新たな抗がん剤の開発もめまぐるしく、治療方法が多様化してきております。それに伴い出現する副作用も多様化しているのが現状です。そのような中、抗がん剤全般についての詳しい知識と豊富な経験を有する医師の必要性が浮上し、ついに2006年に日本で初めてがんの薬物療法専門医が誕生しました。当院にも多数の専門医が存在し、十分な指導体制のもと、今後も多くの医師が資格をとる予定です。

Q2. 抗がん剤って何ですか?
A2.

抗がん剤は大きく分けて、化学療法剤、バイオセラピー(BRM)、ホルモン療法剤および分子標的治療剤に分類されます。50年ほど前から薬として使われるようになり、その種類もどんどんと増えています。現在使われている抗がん剤の多くは様々な副作用を持っています。最近は免疫チェックポイント阻害薬も有効性が示され、徐々に対応が拡大している状況です。副作用については別項で説明します。また抗がん剤の効果には、たとえ同じ病気の種類であっても個人差があり、それが抗がん剤治療を難しくしています。効果にばらつきがあるのと同様に、副作用も個人差があり、同じ薬を使っても副作用の多くでる人と少ない人がいます。それぞれの患者さんに投与される抗がん剤の種類や投与方法、副作用に関しては担当医にご確認下さい。

Q3. 抗がん剤は実際どのように使用されるのでしょうか?
A3.

注射薬、内服薬があります。注射薬の場合、点滴または静脈注射による投与法となります。中には24時間以上持続で点滴を行わなければならないものも含まれます。また抗がん剤が体の中の一部分に留まると強い毒性がでる場合があるので、安全に投与できるように血管内に留置する樹脂でできた針や、細い樹脂の管(カテーテル)を体内に埋め込む場合があります。治療が安全にスムーズに行われるための処置ですのでご理解下さい。
また、日常生活を行いながら、あるいは仕事をしながらがんの薬物療法を続けて行きたいという要望から抗がん剤治療を外来で行うようになってきております。こうしたニーズにこたえるべく東北大学病院では、2004年4月に化学療法センターを開設いたしました。各診療科単位で行われていた化学療法を、専門性の高いスタッフにより安全に行いかつ患者さんには快適な環境下で安心して治療を受けていただくことを目的とした施設です。

Q4. 抗がん剤の効果はどのように判定するのですか?
A4.

抗がん剤の治療効果の判定は、血液検査、画像診断(CT,X線写真、エコー、MRI、内視鏡検査など)で行います。がんの大きさが小さくなるだけではなく、症状の軽減や、生存期間の延長などを総合的に評価しています。治療中は患者さんにはこういう検査が必要です。正確に治療効果を判定することは、現在行っている治療法の是非を判断するだけでなく、今後同じ治療を受ける患者さんへの恩恵も大きいものです。

Q5. 抗がん剤の副作用について教えてください。
A5.

抗がん剤の副作用には、投与後すぐにおきるもの(急性の副作用)と時間が経ってから起きてしばらく続くもの(亜急性)と長い治療の経過で起きてくるもの(晩発性)の3種類があります。副作用として有名なものは悪心嘔吐・脱毛・骨髄抑制 ・腎障害・神経障害などがあります。以下、それぞれの副作用について簡単に解説します。
急性:投与から24時間以内
  薬物アレルギー症状、悪心嘔吐、血管痛など。
亜急性:24時間から2・3週間後
  悪心嘔吐、下痢、脱毛、骨髄抑制 、間質性肺炎、肝機能障害、腎機能障害、神経障害など。
晩発性:数ヶ月から数年、数十年後
  皮膚色素沈着、神経障害、2次がんなど。


副作用に対しては様々な予防薬や治療薬が開発されており、あらかじめ予測される場合には予防薬の投与が行われます。また運悪く副作用がおきてしまった場合には治療が行われます。副作用が少なからずおきることは現在使用されている抗がん剤では避けられない部分でもあり、病気を放置していた場合におきる最悪の事態を回避するためとご理解下さい。
なお、一部の薬剤を除いて、副作用と治療効果は相閲しないとされています。副作用が出ないから治療効果も期待できないということはありませんので、副作用に対しても積極的な予防や治療を行うことが大切です。

Q6. 抗がん剤治療中の日常生活における注意点はありますか?
A6.

よく質問される事に関してお答えします。

●なるべく気楽な気持ちで受けて下さい。
抗がん剤の排与によって、肉体的にはストレスがかかりますが、適度に安静を計る必要性はありません。自分の体調と相談しながら、これまで通りの生活を送っていただけます。
ただし、治療によっては感染に対する抵抗力が低下するものもありますので、手洗いうがい、マスク装着等の基本的な感染対策をお願いいたします。

●無理な食事はしないで下さい。
悪心、嘔吐が出現する可能性がある抗がん剤を使った場合には特に重要です。食べ物の臭いで吐き気を誘発したり、嘔吐することで体力を消耗します。食事は控えめにして、食べられない場合は、すみやかに看護婦か担当医に報告して下さい。体力低下や脱水状態の予防のために、点滴による栄養補給をお願いする場合があります。

●治療中の入浴について。
好中球減少など特殊な場合を除いて入浴は可能ですが、気分の悪いときは避けて下さい。また排尿、排便は抗がん剤の副作用を知る上でも重要な情報となります。性状や色、回数などいつもと違う場合は注意して観察し看護婦または担当医に報告して下さい。

●性生活について。
性生活には支障はありませんが、妊娠は避けて下さい。抗がん剤の中には胎児への影響のはっきりしているものもあります。また体力が低下している時や、パートナーが感染症にかかっている場合は避けましょう。

Q7. 民間療法や代替医療、民間薬についてはどうですか?
A7.

親戚や知人に勧められたり、テレビやインターネット等さまざまなメディアからがんに効くとして情報を入手する機会があると思いますが、基本的には当科で行う治療法との併用は避けて頂くことをお勧めします。これらの治療をご希望される場合は、必ず事前に担当医へご相談ください。

Q8. 実際の症例を見せていただけますか?
A8.

大腸癌を手術した後に、肝臓への転移という形で再発された症例です。図1は治療前のCT写真ですが、肝臓のほぼ全域が多数の腫瘍で占拠されておりました。本症例に化学療法を行いましたところ、数ヵ月後には図2の状態まで、肝転移巣が縮小しました。さらに数カ月化学療法を継続したところ、肝転移巣はより一層縮小し(図3)、当初肝臓全体を占めていた転移巣は部分的に残存するまでに至りました。

  • 図1:大腸がん・肝転移治療前のCT写真
  • 図1:大腸がん・肝転移治療前のCT写真
    肝臓実質(白灰色)を少量残すのみで、大部分は転移巣(濃灰色)に占拠され、肝臓が肥大している。
  • 図2:治療開始数ヵ月後のCT写真
  • 図2:治療開始数ヵ月後のCT写真
    転移巣のそれぞれが縮小し始めた。
  • 図3:図2よりさらに数ヵ月後のCT写真
  • 図3:図2よりさらに数ヵ月後のCT写真
    転移巣はさらに縮小し、中には消失したものもみられる。肝臓自体も縮小し、ほぼ正常の大きさとなっている。
Q9. 抗がん剤の治療スケジュールはどのようにして決められていますか?
A9.

当院で行われる抗がん剤治療のスケジュールは院内の「化学療法プロトコール審査委員会」にて審査されています。有効性・安全性について文献や各種ガイドラインを基に審査し、より安全で質の高い化学療法を提供するとともに、化学療法の実地医療と臨床研究を行う診療科を支援しています。審査委員会は月1回開催され、医師・薬剤師・看護師が参加しています。これによって、診療科や担当医で違いが出ないように、院内で同じ治療が受けられるようになっています。

☆宮城県およびその周辺地域における関連施設とがん薬物療法専門医

●東北大学病院
 腫瘍内科:石岡千加史、千葉奈津子、森隆弘、下平秀樹、城田英和、高橋雅信、
        高橋信、高橋昌宏、今井源、西條憲、小峰啓吾
●宮城県立がんセンター
 腫瘍内科:村川康子、大塚和令
●仙台医療センター
 腫瘍内科:秋山聖子
●大崎市民病院
 腫瘍内科:蒲生真紀夫、坂本康寛
●石巻赤十字病院
 腫瘍内科:大堀久詔、安田勝洋、高橋秀和

☆血液腫瘍、乳癌などその他の臓器別専門医に関する情報は下記にあります。
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/cc/list/list.html

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