AYA世代のがん

AYA世代のがんについて

 AYA(アヤと読みます)世代とは、思春期および若年成人(15~39歳)を指します。この年代は、就学、就労、妊娠・出産、子育て、医療費支出、体調管理など様々な問題を抱えながらがんと向き合う必要があります。こうした課題に対処するためには、医師、看護師、心理士などの医療者に加え、ソーシャルワーカーや行政など各方面の専門家が力を合わせて解決に向けて支援する必要があります。
 東北大学病院では、各診療科や各部署が横断的に一体となって支援を行う体制を構築しました。こうした対応はすでに日本各地で開始されており、病院あげての取り組みは東北初となります。
 AYA世代は年代の幅も広く、それぞれの状況は多岐にわたりますので、様々な部門の専門家がチームを組む予定です。患者さんやご家族のお役に立てますよう全力を挙げて支援させていただきますので、多くの皆様にご活用いただければ幸いです。


AYA世代のがんの特徴

 日本では、毎年約2万人のAYA世代の方ががんと診断されていますが、これは国内のがん患者の約2%です。AYA世代では、小児や高齢者に比べて、リンパ腫、胚細胞性腫瘍、肉腫などの特定のがんと診断されることが多いですが、その発生率は年齢によって異なります。
 白血病、胚細胞性腫瘍、リンパ腫は15~19歳で最も多いがんです。
 20~29歳では、胚細胞性腫瘍、甲状腺がん、白血病・リンパ腫の他、乳がんや子宮頸がんが増加してきます。
 30〜39歳では乳がん、子宮頸がんが最多となり、胚細胞性腫瘍などが続きます。

1 がんの種類による推移

2 患者さんの推移

AYA世代のがんの診療


総合外科(乳腺)

 AYA世代のなかでも30歳代で最も多いのは乳癌になります。AYA世代の乳癌の方は、治療による身体的・精神的負担によって仕事との両立が難しくなってしまったり、家庭との両立や子育てがとても困難だと感じる方が多いです。また、病気のことをどのように子供へ伝えるかで悩みを抱えている方も多いです。経済的なサポートも40歳以上の方と比べると不足しています。
 乳癌ではほとんどの方で薬物療法を行いますが、化学療法によって妊孕性(子供を授かる能力)が失われてしまったり、ホルモン療法などによって今後の妊娠・出産が制限されることがあります。このような場合は妊孕性温存をどのように行うかを考えなければなりません。また、若年であるほど遺伝性乳癌の可能性が高まるので詳しい相談が必要になります。
 このように様々なことで将来への不安が大きいのがAYA世代の乳癌の特徴であり、それぞれの悩みに合わせた診療とサポートが必要となります。

婦人科(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんについて)

 婦人科がんは、稀な悪性腫瘍を除くと、子宮の頸部に発生する子宮頸がん、子宮内膜(月経や妊娠に関わる場所)に発生する子宮体(内膜)がん、卵巣に発生する卵巣がんがあります。特に子宮頸がんは、甲状腺がん、乳がんとともに、20〜39歳のAYA世代のがん罹患数の上位3位に入る疾患です。若年の子宮体がんでは、早期がん、高分化型類内膜がん(ホルモン依存性で元の子宮内膜に類似)が多く、卵巣がんでは、胚細胞腫瘍(胎生期の未熟な原始生殖細胞から発生する腫瘍の総称)の頻度が高いです。いずれのがんも、女性の生殖器(子宮)や性腺(卵巣)に発生するがんですので、根治治療としては摘出が原則となります。生殖器や性腺の摘出は、妊孕性(妊娠のしやすさを表す言葉)喪失に直結してしまいます。しかしながら、それぞれのがん種において、進行期(がんの広がり)や組織型(がんの顔つき)によっては、根治性を担保しつつ、妊孕性の温存をめざした機能温存手術術式の選択や、治療法の選択が可能となる場合があります。詳しくは担当医へご相談下さい。

小児科

 小児白血病や悪性リンパ腫などの血液腫瘍性疾患、神経芽腫や肝芽腫、ウイルムス腫瘍などの固形腫瘍、脳腫瘍の診断と集学的治療を行っています。より良い標準的な治療を提供するために全国規模の治療研究(JCCG/JPLSG)への参加による治療成績の向上を目指しています。難治性疾患に対しては造血幹細胞移植や、新規治療としてのCAR-T療法やがんゲノム解析による分子標的療法も施行しています。小児がんは治療成績の向上により、多くの患児が治る病気になってきました。小児科の全専門分野の医師や他科医師との協力のもと、多職種スタッフ(看護師、臨床心理士、院内学級教師、保育士、小児専門ソーシャルワーカー、チャイルドライフスペシャリスト)が教育行政の方々とも連携して、長期入院での療養支援や復学支援、きょうだい支援、長期フォローアップ外来や造血細胞移植後フォローアップ外来を通じて、病気を克服するお子さんとご家族を支援しています。

小児外科

 小児がんには、神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫、横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、転移性肺腫瘍(肺以外の場所にできたがんが肺に転移したもの)などがあり、それらに対する治療は、小児血液腫瘍科、放射線科、病理診断科などと協力して行います。その中で小児外科は手術を担当しています。
 手術には、腫瘍生検、根治手術、化学療法を施行するための中心静脈カテーテル挿入などがあります。
 小児期に手術をした方は、可能な限り長期にわたって外来通院をしていただき、定期的にCT、MRI、採血などの検査を行ってがんの再発や新たながんが発生していないか確認しています。
 その過程で再発や新たながんの発生を発見した場合は、がんが発生した臓器や年齢によって柔軟に対応しています。
 たとえば、思春期以降に卵巣の腫瘍が再発あるいは新たに発生した場合は婦人科の先生、肝臓の病変は肝臓外科の先生といった成人領域の専門家にも相談し、協力して治療(手術)を行っています。

泌尿器科(精巣がん)

 精巣がんの多くは精巣に発生する胚細胞腫瘍です。男性AYA世代において頻度が高い悪性固形腫瘍で、本邦でも増加傾向にあります。精巣が大きくなったり、硬くなったりした場合は精巣がんの可能性があります。精巣がんはリンパ節や肺などに転移しやすく、腰痛や咳などの症状で見つかることもあります。精巣がんの多くは化学療法が有効で、転移を有する精巣がんにおいても適切な化学療法とその後の残存腫瘍切除などを含めた集学的治療によって治療成績が向上しています。一方で集学的治療に伴う妊孕性の低下、性機能障害や末梢神経障害などの有害事象が精巣がんサバイバーのQOLを低下させています。当科では治療後の妊孕性やQOLにも注意を払いながら精巣がんの治療や精巣がんサバイバーシップに取り組んでいます。

腫瘍内科

 大腸癌、胃癌は成人世代のがん罹患の上位を占めていますが、AYA世代においても年齢が上がるほど割合が増加し、30歳代ではがん罹患の5位に大腸癌、6位に胃癌が挙がります。消化管に発生するため消化器症状が出やすく食事摂取量に影響しやすい特徴があります。病期(がんの広がり)によって手術や内視鏡治療といった局所治療を行うか、薬物療法が適するか、両者の併用かが異なります。AYA世代は大腸や胃のがん検診の年齢以下のため無症状で見つかることは成人期より少なく、薬物療法が必要となることが多いです。病気や治療による身体的負担に加え、仕事や家庭との両立についての困りごと、心のつらさを抱えることもあります。担当医と看護師に加え、必要時は他のスタッフと連携して対応します。
 環境要因と遺伝要因といった様々な原因が複合して偶発的にがんは起こります。特定の原因がないことが殆どですが、一部の遺伝性腫瘍には遺伝しうる遺伝子の変異がみられることがあります。リンチ症候群や遺伝性乳がん卵巣がんはAYA世代に発症するリスクがあり、遺伝性腫瘍の中では頻度の高い体質です。これらの診断により、がんの早期発見のための対策(どういった頻度でどの臓器の検診を重点的にした方がよいか)、分子標的薬の適応、遺伝性乳がん卵巣がんであればリスク低減手術といった選択肢に役立てられます。
 がんに関連した遺伝子検査は、がんの種類によって異なりますが、腫瘍組織や血液中の腫瘍由来DNAを用いて腫瘍部分の性質を調べる遺伝子検査と、血液を用いて体質まで調べる遺伝学的検査があります。前者はがんの種類によって治療薬の選択に関わる一部の遺伝子を検査し、検査結果をもとに効果が期待できる治療薬を選択することができます。遺伝学的検査も同様ですが、遺伝する可能性に関わるという点で十分説明し同意いただいた上で検査します。本人だけの検査では遺伝するか確定されませんので、あくまで本人の診療のための検査です。これら検査の適応や時期はがんの種類や病期により異なりますが、遺伝子情報に基づく個別化医療が行われています。

整形外科

 整形外科では、骨に発生する骨腫瘍、筋肉・脂肪などの軟部組織に発生する軟部腫瘍の診療を行っております(両者をまとめて骨・軟部腫瘍と呼びます)。骨・軟部腫瘍の中でも、骨肉腫、Ewing肉腫などがAYA世代に好発するものとして代表的です。化学療法、手術、放射線治療などを組み合わせて治療を行いますが、早期であっても半年間以上の治療を要することが多くあります。また手術では、確実に腫瘍を切除するとともに、可能な限り機能を再建する必要があり、特にAYA世代の患者さんでは、将来困らないように長期的な機能を見据えて手術を行う必要があります。当院では、これらを早期に適切に診断し、治療するために、放射線診断科、病理部、小児科、腫瘍内科、放射線治療科、形成外科等、複数の診療科と密に連携し、診療を行っております。どうぞお気軽にご相談ください。

精神科(AYA世代のがん患者さん・ご家族のメンタルヘルスケアについて)

 精神科では、がん自体を治療することはありませんが、がん患者さんとご家族のメンタルヘルスに関する診療を行っております。
 一般的にがんに罹患すると、およそ3人に1人は気持ちの落ち込みを感じると言われています。当科では気分が落ち込む・やる気が出ないなどの気持ちのつらさや心配事が増えて生活に支障が出ている・落ち着かないなどの不安、夜眠れないなどのお困りの症状に対して、お話することや、必要に応じてお薬などによる治療によって症状を和らげる診療を行っております。
 また、AYA心理相談を担当する公認心理師(カウンセラー)も所属しておりますので、AYA心理相談の中でお薬による治療も行った方がよいと考えられる場合、スムースに連携できます。
 なお、ご家族の方のサポートも行っておりますが、当院は紹介受診重点医療機関ですので初診時にはかかりつけ医からの紹介状が必要となります。
 AYA世代のがん患者さん・ご家族が、よりよいがん診療を受けられるようサポートしてまいりますので、診療をご希望の際はいつでも主治医の先生へご相談ください。

緩和医療科

 緩和医療科は、がん患者さんの心身の苦痛や治療に伴う副作用、生活面の心配など様々な困りごとに対応しています。
 緩和ケアは終末期だけのものではなく、がんと診断された時から必要であるといわれており、当科ではがん治療中や治療開始前の患者さんを多く診療しています。
 特にAYA世代の患者さんに対しては、学校・職場への復帰や治療との両立、家族・お子さんへの伝え方、妊孕性温存についての意思決定など様々な場面で、専門看護師、精神科医師、薬剤師、栄養士、リハビリテーション科、ソーシャルワーカーなど多職種と連携しサポートしていきます。
 心身の苦痛や副作用を軽減し、生活面についても相談しながら、より良い体調で治療が続けられるよう患者さんに伴走します。
 外来通院中は緩和医療科外来、入院中はサポーティブケアチームで対応しており、身近な医療者に相談いただければ受診が可能です。話をしてみたいけど何を相談すればよいか分からない、という方もぜひご相談ください。

歯科顎口腔外科

 口腔がんは多くの場合60歳代以降に発症するといわれており、全世代の口腔がん患者のうち2.8%がAYA世代の方です。口腔がんの代表的なタイプである扁平上皮癌は一般に喫煙やアルコール摂取などがリスク因子とされていますが、AYA世代の口腔扁平上皮癌においてはこれらのリスク因子が無くとも発症することが多いのが現状です。
 口腔がんは舌や歯肉、頬粘膜などに外向性に発達した腫瘍としてみられたり、自然治癒しない潰瘍のようにみられ、AYA世代においては特に舌に発生する頻度が極めて高い言われています。治療法として多くの場合外科的手術が選択され、必要に応じて放射線治療や化学療法を併用します。手術により舌や上下顎骨が大きく欠損してしまうこともあり、術後の咀嚼障害や嚥下障害、構音障害、審美障害などが問題となります。早期発見により手術や術後療法に伴う負担を軽減することができるため、気になる症状がある場合は早期に医療機関を受診することを推奨します。また口腔がんは治療後の就労やライフワークとも大きく関わり、根治性はもちろんのこと社会復帰を実現するため、多種職と連携しながら口腔機能の獲得を進めていきます。遊離組織再建手術により顎口腔機能・形態の回復を図ったり、咀嚼障害に対して、顎義歯という顎骨の欠損を補う入れ歯を作製したり、保険適応のあるインプラント治療を行うことで、手術前の状態に近い口腔機能獲得を目指します。

がん薬物療法とは

薬物療法

 「がん薬物療法」とは、薬を使用して、がん細胞の増殖を抑えたり、死滅させたりする治療法のことをいいます。
 その中でも、抗がん薬を使った治療法のことを、「化学療法」といいます。抗がん薬は、がん細胞の細胞分裂の重要な過程に作用して、効果を発揮します。
 がん細胞に特異的に発現している物質を攻撃して、がんの増殖を抑制する、分子標的薬といわれる薬剤を使った治療法を、「分子標的療法」といいます。
 乳がん、前立腺がんなどの、ホルモン依存性のがんに対しては、ホルモンの働きに影響を及ぼす薬剤を用いた、「ホルモン療法」が選択される場合があります。
 また最近では、がんによってブレーキがかけられた免疫の攻撃力を回復させる、「免疫療法」が使用されることもあります。
 がん薬物療法は、これらの薬剤を一種類だけ用いる場合もあれば、複数の種類を用いる場合もあります。さらに、手術療法や放射線療法が組み合わされることもあります。


副作用を上手に克服しましょう!

 「化学療法」、「分子標的療法」、「ホルモン療法」、「免疫療法」には、それぞれに特有の副作用があることがわかっています。
 そのなかでも使用する薬剤によって、副作用の起こりやすさはそれぞれ異なります。
 また、症状の程度や現れる時期にも個人差があります。
 治療を受けられる方ご自身で、予想される副作用を把握し、日常生活上の工夫や注意点を理解しておくことで、副作用を予防したり、起きてしまった時に軽い症状で済ませることができる場合もあります。
 がん薬物療法を計画通りに継続し、期待される効果を最大限に発揮させるために、副作用にうまく対処していくことが大切になります。

~副作用とうまくつきあい、より安全で快適にがん薬物療法を受けるためのポイント~
①がん薬物療法の副作用にはどのようなものがあり、いつ頃現れやすいのかを理解しておきましょう。
②患者さん自身で行うことのできる予防方法もいくつかあります。可能なものから行いましょう。
③重大な副作用はどのようなものがあるのか、初期症状はどのようなものがあるのかを知っておきましょう。
④すぐに医師に伝えなければならない症状を把握しておきましょう。
⑤「治療手帳」を活用しましょう。

治療手帳
治療手帳
 副作用をうまくコントロールしていくには、副作用の発現状況について患者さんと医療スタッフの双方で共有することがとても大切です。
 当院ではそのために患者さんに「治療手帳」をお渡ししています。是非活用してください。

*治療手帳は病院・薬局に毎回持参しましょう
*病院と薬局との連携のために、薬局薬剤師にも治療手帳を確認してもらうようにしましょう


特にAYA世代の方に知っていただきたいこと

写真

・小さいお子さんと同居している方は、薬を手の届かないところに保管しましょう。
・出産後に化学療法を受ける場合、授乳や乳幼児との入浴等については、主治医に
 相談してください。
・がん薬物療法を受けていて、将来的に妊娠・挙児を希望される場合や、ご自身や
 パートナーに妊娠の可能性がある場合は、女性・男性を問わず、主治医にご相談
 ください。
・がん薬物療法中だけでなく、終了後でも気になる副作用症状(仕事や学業に影響
 がある症状など)があれば、遠慮なくご相談ください。

不妊治療や生殖機能に関すること

妊孕性(にんようせい)について
 妊孕性とは、妊娠のしやすさのことをいいます。
 がん治療においては、手術、抗がん剤(化学療法)、放射線治療が、性腺(卵巣・卵子や精巣・精子)や性機能(排卵、射精・勃起)に対して影響を及ぼす場合があります。がん・生殖医療とは、日本がん・生殖医療学会によると、「がん治療を最優先にすることを大前提として、がん患者さんがお子様を持つことを応援する医療」と言えます。その中には、がん治療前に妊孕性を温存するための「妊孕性温存療法」と、がん治療後の妊娠を補助するための「がん治療後の生殖医療」があります。「妊孕性温存療法」の具体的な方法には、男性における精子凍結、女性における卵子凍結や卵巣組織(卵巣)凍結、婚姻関係にある夫婦や、それに準じた事実婚カップルを対象とした受精卵(胚)凍結があります。「がん治療後の生殖医療」は、がんが完治し、ご夫婦の間、または事実婚関係のパートナーと間において、主として、凍結保存しておいた精子や卵子、胚を融解して利用する生殖補助医療(体外受精胚移植など)のことを意味します。
 がんと診断されたとき、将来的に子どもを持つことを望まれる場合には、がんの治療開始前に妊孕性に関する情報を得て、よく考える時間を持つことが大切です。妊孕性を保つ治療方法を選択できる場合もありますので、主治医の先生や医療スタッフとよく相談してみましょう。がん治療と性腺への影響、妊孕性温存療法の適応や種類、国が主導する妊孕性温存研究促進事業(助成制度)、ならびに、宮城県における、妊孕性を保つ方法や相談窓口などについては、以下のウェブサイトを参考にしてください。

▼日本がん・生殖医療学会
https://www.j-sfp.org/

▼患者さん、一般の方へ「関連動画集」
https://www.j-sfp.org/support/videos.html

▼宮城県がん患者生殖機能温存治療費等助成事業
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kensui/aya-seisyoku.html

▼宮城県がん・生殖医療ネットワーク
http://www.ob-gy.med.tohoku.ac.jp/miyagi-c_rt/index.html

医療費について

 加入している健康保険に事前に申請し「限度額適用認定証」を発行してもらうことで、病院での窓口負担額をはじめから自己負担額のみにすることができ、多くの金銭を準備する等の経済的負担が軽減されます。
 小児がんの患者さんは、子ども医療費助成や小児慢性特定疾患(新規申請は18歳まで、継続は20歳前日まで対象)の制度を利用することにより、医療費の負担軽減を図ることも可能です。
 その他にも、医療費控除、傷病手当金や障害年金など、患者さんの状態や条件によって利用できる制度もあります。病院のソーシャルワーカーにご相談ください。

▼国立がん研究センターがん情報サービス(がんとお金)
https://ganjoho.jp/public/institution/backup/index.html

▼国立がん研究センターがん情報サービス(小児の医療費の助成制度)
https://ganjoho.jp/public/life_stage/child/institution/subsidy.html

困りごとや心のつらさがある方

 不安になったとき、困ったとき一人で悩まないでください。 AYA世代は就学、就職、恋愛、結婚、出産、育児などの様々なライフイベントを経験する時期であり、様々な気がかりや困りごとが生じます。 AYAがん相談窓口では患者さん、ご家族のご心配事についてお話を伺います。院内の患者さんに対してはスクリーニングシート(AYAがん相談窓口リーフレット)を活用し必要時は専門的なスタッフに繋ぎ支援体制を整えていきます。


身体的なこと: 症状、容姿
→ ウィッグ相談室など
家族に関すること: 妊孕性(妊娠のしやすさ)(にんようせい)
家族との関わり、家族が抱える不安
→がん看護外来など
日常に関すること: 通院、仕事(通勤)、学校(通学)、
育児、家事、介護
治療費・生活費など経済的な不安
→ソーシャルワーカーなど
気持ちに関すること: 気分の落ち込み、不安、恐怖、
興味や楽しみの喪失、
医療者との関わり
→心理相談 
 がん看護外来、緩和医療科など
直接担当医、看護師にご相談いただいても構いません。


心理相談について

 当院では、AYA世代のがん患者さんの気持ちの相談に対応する「AYAがん心理相談」を行っています。
 がんと診断された場合、今までは気にならなかったような小さなことが気になったり、ストレスを感じて不安になったり、落ち込んだりすることがあります。こうした気持ちの変化は自然な反応と言えますが、日常生活に支障が出たり、つらい状態が続いたりしているときは、担当医や看護師、心理師などに相談が必要かもしれません。
 自分の心のことを誰かに相談することに抵抗がある方や、恥ずかしいと考える方もいるかもしれませんが、心のつらさについて相談することは、がんの治療を受けることと同じように大切なことであると言われています。
 「AYAがん心理相談」はAYA世代のがん患者さんであれば、どなたでもご利用できますので、AYAがん相談窓口や身近な医療者に声をかけてみてください。担当の公認心理師が患者さんのペースに合わせて、ゆっくり時間をかけてお話をおうかがいし、困りごとや心の持ち方、対処の仕方を一緒に考えていきます。
 相談の費用は、健康保険が適用されます。また、相談は原則として最大6回までとなっています。お話しした内容が患者さんの了承なしにほかの人に知られることはありませんので、安心してご利用ください。

就学支援

 入院中の高校生の学びをサポートする体制として、ICT機器を活用して遠隔授業を行うなど、学習機会の確保や復学に向けた支援を行っています。リアルタイムでの同時双方向型オンライン授業だけでなく、オンデマンド型(録画された授業や教材を用いて)での学習など、本人の体調や状況に合わせた対応もご相談可能です。文部科学省から指定を受けた高校では、遠隔授業で受けた分の単位も認められます。詳細は各自治体の教育委員会、または病院のソーシャルワーカーにご確認ください。

AYAルーム

AYAルーム

 AYAルームとは、高校生、大学生、専門学校生、大学や専門学校などへ進学を考えている方々を対象に設置された学習の場です。小児医療センター内(西5階病棟)に設置されています。デスクをパーテーションで区切り、パーソナルスペースを確保することができます。
 病気で長期入院せざるを得ないAYA世代患者からは「学習の遅れが心配」「友だちが学校のことで盛り上がっていると疎外感を感じてしまう」などのお話があります。入院中や治療中であっても、学校との繋がりを持ち、学習を継続できることは治療への意欲にも繋がります。感染症流行中は対応が異なる場合がありますが、ご興味のある方は各病棟の師長またはソーシャルワーカーへご相談ください。

就労支援

 働きながら治療をしている人もいます。でも、治療によっては働きたくても働けないこともあります。
 「通院や治療のための勤務時間や時間休の確保が難しい」、「健康や体力に自信がない」、「なんのために仕事をする?」、「お金が必要」、「社会に出たい」など思いを話してみませんか?
 がん診療相談室(がん相談支援センター)では制度の紹介だけではなく、仕事に関する悩みについて一緒に考えます。
 また専門家による2つの相談会を開催しています。相談会は予約制になりますので、直接来室いただくか、お電話でお伝えください。
詳しくはホームページ
イベントカレンダー|がん診療相談室(がん相談支援センター)がんサロン『ゆい』|東北大学病院 (tohoku.ac.jp)
をご覧ください。

ハローワーク出張相談会  毎月第2火曜日、第4木曜日 13時~、14時~
・ハローワーク仙台より長期療養者の就労の相談に応じてくれるナビゲーターが出張相談に来ています。
・求人や職業訓練などの情報提供や、これからの就職活動(履歴書の書き方や面接の受け方など)の相談もできます。

社会保険労務士相談会   毎月第2金曜日、14時~、15時~
・労働環境や障害年金など制度についてお話を伺います。
・復職するがどのように働けば良いのだろうか?
・病気に関連することはどこまで、何のために、誰に伝えるの?
・仕事を休みたい、辞めたいが経済的に不安がある・・・ など

容姿のこと(アピアランスケア)

外見に関するケア(アピアランスケア)

 がんやがん治療により、脱毛や色素の変化、手術による部分の欠損や変形など、患者さんの外見には様々な一時的あるいは長期的な変化が生じます。これらの変化は、患者さんのQOL(生活の質)には大きく影響します。
 特に思春期・若年成人(AYA世代)は、就学、就職・就労、結婚、出産など大事なライフイベントが重なる時期に病気に直面することになります。外見の変化は、人と会ったり話したりすることに抵抗を感じたり、自信を失うなど精神的なつらさの原因の一つになることがあります。
 アピアランスケアは、がんの治療中でも社会性を保ち、自分らしく笑顔で過ごすためのケアです。単に美容整容的な手段で外見変化を補完するのではなく、がんやがん治療による外見の変化と、それがもたらす生活上の困りごとや周囲の人との付き合い方の悩みについて、「その人らしく生きる」「快適に生活する」ことをサポートしていきます。

家族とのかかわり方

<未成年の子どもがいる方>
 がんと診断されたとき、動揺するのは無理もありません。気持ちが不安定になったり、やり場のない思いがあらわれたりすることは自然な心の反応です。
 このような状況の中では、「これから子どもを育てていけるのか」、「子どもを世話しながらどうやって治療を受けていこうか」、「子どもに病気のことを伝えた方がいいのだろうか」、「子どもに心配をかけてしまう」など、さまざまな心配や不安、悩みや困りごとを抱えることがあります。また、子どもと向き合う気持ちになれなかったり、子どもにきつくあたってしまったりすることがあるかもしれません。
 治療や体調、気持ちの状態によっては、これまでと同じように子どもとコミュニケーションをとることが難しいこともありますが、がんと診断されたあとも、子どもとコミュニケーションをとっていくことが大切です。無理をせず、できるときにできる範囲で、体調がすぐれない理由を伝え、子どものことを大切に思っている気持ちを伝えることが大切です。また、病気について子どもと話すかどうかは、がんと診断された本人の意向、病気や治療の状況、子どもの年齢や発達、家族関係、家族の生活、育児の方針などによって異なります。子どもと話さない人、話せない人、話すかどうか迷っている人、話したいけれどどうしたらよいか分からない人、話したあとの接し方に悩んでいる人、さまざまな考えや思いがあると思います。病気について子どもと話すかどうかに正解はなく、考えが変わるのも自然なことです。病気について子どもと話すことに関する考えや方針を、子どもと接する大人が共有しておくことが大切です。

<高齢の親がいる方>
 がんを告知されたとき、親に話すと、余計に心配をかけてしまうのではないか、あるいは話さないほうがいいのか迷うかもしれません。しかし、高齢で遠方に住んでいる、何かの理由で疎遠になっているなどの特別な事情で話したくない場合もあるかもしれません。家族であっても伝えなければ、分かり合えないことがあります。自分の率直な気持ちを伝えることで、親はあなたが感じていること、考えていることについて理解を深めることができます。
 患者さんのことを心配するあまり、時にはご自身で決められることに対して、親御さんの考えや希望を言ってくるかもしれません。患者さんご自身と同じように、親御さんも患者さんの病気のことを受け入れるには少し時間がかかるかもしれません。それを待つという心構えも必要です。親御さんが受け入れられれば、強い味方になってくれるはずです。伝える前の心構えや、伝えるタイミング、伝え方について、ともに考えていきます。

『家族とのかかわり方 Q&A』

親の介護をしています。何か使えるサービスはありますか?
介護保険の認定を受けることで、ヘルパー利用、ベッドや車いすなどの福祉用具レンタル、介護施設入所などのサービスが、1割~3割の自己負担によって利用可能になります。65歳以上の方、または40歳~64歳の方で厚生労働省が定める16 疾病(がん、脳血管疾患等)により要介護状態や要支援状態となった方が対象です。病院のソーシャルワーカーや退院調整看護師、お住まいの市区町村窓口や地域包括支援センターにご相談ください。

子供の預け先や家事の代行サービス、通院のサポートなどはありますか?
あまり多くのサービスはないのが現状ですが、通院などの理由で保育が困難な時に、一時的に保育所等施設を利用できる一時預かり事業や、支援をする側・受ける側相互の信頼関係のもと、子どもを預けることができる子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)が市区町村ごとに設けられています。他にも地域によっては、家事支援や通院同行をお願いできる民間のサービスもあります。詳細は市区町村の窓口や病院のソーシャルワーカーにご相談ください。

参考資料のリンク
▼国立がん研究センターがん情報サービス(介護保険)
https://ganjoho.jp/public/institution/backup/elderly_care_insurance.html

▼【がんになった親と子どものための情報サイト】
Hope Tree(特定非営利活動法人ホープツリー)~パパやママががんになったら~
https://hope-tree.jp

▼宮城県子育て支援情報サイト みやぎっこ広場 各市町村子育て支援サイト
https://www.pref.miyagi.jp/site/kosodate/shien.html

友人・同僚など周囲の人との関係

 病気のことを周囲の人にいつどのように、どこまで伝えるか、悩まれる方も多いと思います。ご自身の気持ちが落ち着いてから、誰に何のために話したいか、ゆっくり考えてみてください。例えば、治療のために、仕事を休んだり、業務上の配慮を得たりするために、職場で病気や治療について伝えることが必要な場合もあるでしょう。職場や学校では、何ができて何が難しいか、どのような配慮があると助かるか、といったことを具体的に伝えることが役立つかもしれません。ただしその際も、職場や学校のすべての人に伝える必要はありません。あなたが伝えても良い、あるいは伝えたいと思うのは誰かを考えた上で、「この話は誰まで伝えています」と併せて話すことで、思わぬところで話が広がることを防ぐことができることもあります。特に職場での周囲への伝え方については、ソーシャルワーカーをはじめとする医療者が相談にのれることもあります。
 また友人に伝えることで、あなたの気持ちを聴いてくれたり、体調がいいときに気分転換に付き合ってくれたり、などと力になってもらえる場合があります。一方で、病気を知らずにいつも通りに接してもらうことが、あなたにとって居心地が良いと感じられる時間になる場合もあるでしょう。もともとの相手との関係性にもよることですので、こちらについてもゆっくりと考えて決めていくのが良いでしょう。
 なお、生活に制限があったり、体調がすぐれないときに、SNS等で元気な友人などの投稿を見ることで、気持ちがつらくなってしまう人も少なくありません。そのようなときには、SNS等から少し距離を置くことが、あなたの心を守ってくれるかもしれません。

恋愛・結婚のこと

 闘病中にパートナーの存在が大きな支えになることもあるでしょう。一方で、病気になったことで、恋愛や結婚について悩まれる方も少なくありません。今の配偶者・パートナーにどのように伝えようか、という迷いや、将来的に恋愛や結婚ができるだろうか、という不安を抱える方もいらっしゃいます。相手の親御さんへの伝え方や関係性に悩まれる場合もあります。今すでに配偶者・パートナーがいらっしゃる方は、互いの気持ちや考えをよく伝え合うことが大切になってくるでしょう。また今後恋愛を始める際に、病気のことをいつ伝えようかと悩まれる方もいらっしゃいます。このタイミングに正解はありませんが、ある程度信頼関係を築くことができてから「この人になら伝えたい」と思ったタイミングで伝える方も多いようです。新しい恋愛を始めることに対して消極的になる方もめずらしくはありません。そうした不安や迷いについて、同じ立場であるピアの方と話すことで「不安に思うのは自分だけじゃない」と感じることができ、気持ちが楽になるかもしれません。
 妊孕性や遺伝による恋愛や結婚への影響が気になる方もいらっしゃるでしょう。その場合は医師や看護師だけでなく遺伝カウンセラーなどがお役に立てる場合もあります。プライベートなことなので、医療者には相談しづらいと感じられるかもしれませんが、お話を聴いたり、一緒に考えていったりすることもできますので、ご相談ください。

患者会・ピアサポートについて

 同じ経験を持つ患者さんとの交流や情報を得ることで気持ちが軽くなったり、安心して療養生活を送るヒントを見つけられるかもしれません。


若年性がん患者さんのためのがん患者オンラインカフェ(不定期開催)
対象:15歳以上40歳未満にある時期にがんにり患されたがん治療中の方
主催:東北大学大学院医学系研究科保健学専攻がん看護学分野・緩和ケア看護学分野

※開催日時については「がん情報みやぎ」、「東北大学病院」ホームページのイベント情報からご確認ください

がんサロン『ゆい』茶話会
がん診療相談室・がんサロン『ゆい』ではがん患者さん、家族を対象に「茶話会」を開催しています。
※がん種や年齢、性別、療養機関は問いません。
詳しくはホームページ
がん診療相談室(がん相談支援センター)がんサロン『ゆい』|東北大学病院 (tohoku.ac.jp)
をご覧ください。



AYA世代のがんのサポート体制

参考資料・リンク集

▼がん情報みやぎ
https://cancer-miyagi.jp/

▼国立がん研究センターがん情報サービス
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